全館再開のお知らせ

せんだいメディアテーク



せんだいメディアテークをもっとよく知るためのさまざまな情報を、副館長の佐藤泰がお届けします。

61「復興のD.I.Y.」

日曜大工やガーデニングの材料や道具類が大量に用意されたDIYセンター。震災のあとの再開時、応急対策に使える資材や燃料、電池、食品類が一気になくなる一方、本来花形だった趣味の道具類が居心地悪そうに隅に残っていたような記憶があります。DIYは、"Do it yourself"の略ですが、そもそも第2次大戦後のイギリスで、空襲により瓦礫となった街を、市民が自らの手で復興していくためのスローガンとして使われ始めたのだそうです。その後、アマチュアの大工仕事や手仕事を支援する産業ジャンルの代名詞として、世界中に拡がる一方、イギリスの前衛的なロック音楽のキャッチフレーズともなるなど、私たちの主体的な生活や自由な文化のあり方に少なからず影響をもたらしてきました。
阪神大震災をきっかけに、私たちは市民活動や情報ネットワークの底力を発見し、行政や企業に頼らず、公共の福祉を市民ひとりひとりが自らの意思に基づいて支える方法を学びました。情報や公共サービスにおいて、市民の主体性を支えるDIY化が始まったとも言えますが、一方で技術や社会システムの高度化は、さまざまなブラックボックスを生みだし、専門分野への一般の市民の関与を難しくしてきた面もあります。そんな中でメディアテークのような公共施設の役割は、少しでも多くの人々が、そうしたブラックボックスを乗り越え、自由に社会との接点を持てるように環境整備をしていくことだと言うことができるでしょう。ただし、DIYの"yourself"。今となってはどこか上から目線の言葉にも聞こえます。「協働」の時代、むしろ"Do it ourselves" と言う方がふさわしいのかもしれません。

(2012/09/01)


  • 市民による情報発信に向けた機材
    市民による情報発信に向けた機材

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