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このたび仙台市民ギャラリー開館20周年を記念して、「郷土ゆかりの物故作家回顧展」を開き、併せて出展全作品をカラーで収録した画集も刊行することになった。市民の皆様、県内外の愛好家の方々のご期待に添える充実した内容になった。まことにご同慶に耐えない。この20年間、市民ギャラリーの果
した役割と、地方文化振興に寄与した業績は筆舌に尽くし難い。このたびの時宜を得た企画に対しても、惜しみない賛辞をおくりたい。
出展作品の選定に当たっては、戦後50年の区切りの年でもあり、“戦後物故者名作展”を念頭において、十余名の実行委員が宮城理事長のご指導のもとに、1年間の長期に亘り懸命の努力を重ねた。その労作内容は省略するが、検討候補に挙がった物故作家は160余名に達した。内容の充実を図るため、展示作品は大作を中心にする方針と、合わせて会場壁面の都合から作品数が限定された。原則として一人2点の出品とし、おおよそ30名に絞ることにして作業を進めた。作品の保存状態を所蔵先のご協力を得て調査し、記録写真を撮るなどして検討資料とした。お借りすることになった作品については、本展開催の趣旨をご理解いただくとともに、額装までお気遣いを頂戴してご協力を賜った。展示作品の選定に当たっては、特にご家族の希望も考慮してあり、最終的には、展示壁面ギリギリの79点(40名)の出展となった。惜しくも、今回展示できなかった作家、所蔵先が判らなかった作品についても、他日何等かのこうした機会があればと希う次第である。
時代が人をつくるように、絵かきも時代の思潮と無縁ではあり得ない。今回の出展作品の中に昭和初期のものが10点ほど入っているが、主として終戦の翌々年から平成4年までの作品が一堂に陳列されているので、戦後半世紀の世の移り変わりを感じとられる回顧展でもあろう。
概して制作中の作家は、人に観られるということを意識しないように思う。純粋に自分を描き出そうとしているに違いない。しかし、絵は見るものであるから、大切なのは見方をどうするかである。おそらく観覧される方々の中に、作家をご存じの方が多いのではないかと思う。懐かしさや親しみを越えた、新しい発見があるだろうと期待をしている。人々の記憶やノスタルジーなどと結びついた時間・空間であっても、懐古展ではないのであるし、厳然として生の作品がそこに在る限り、感傷的になり得ないであろうと思っている。
絵かきは一見華やかに見えるかもしれないが、まことに地味である。アトリエに在っても、戸外の制作でも常に孤行で自分と斗っている。世の常の事にかかわる余裕を持てないから孤独といえばそうともいえるが、孤高の域に達していられるとすれば羨ましい限りである。絵かきに孤高の人がいても枯淡の作家はいないのではないか。89歳の北斎が死に際に、旺盛な制作意欲のある胸の中を口にしながら神に悪態をついたというエピソードがあるが、作家には晩年も枯淡もないもののようである。
「豪雨の後の夜空に出た月はまだ濡れていました。真夜中の海を渡る月(中略)自然の感動を夢中でかきました。」この短文は、ある物故作家の図版の巻頭言である。人はさまざま、絵かきもさまざま。この作家のフォービックな筆致からは想像のできない静寂なことばである。文は人なりというが、絵も人ではないか。
日頃、私は絵と作家名は結びつくが、その人間性と結びつかない思いがしてもどかしく思っていた。回顧展を観てもその思いは深まるばかりである。そこで``絵は人なり"についてであるが……。
時代が人をつくるから当然作品もその反映と考えられる。生来の個人的な生活文化・環境も大きなファクターであろうし、又絵は個の表現であるから、その啓発の源である動機がある。“人生は邂逅"というが、絵かきは正にその運命的なものに影響されると思っている。個の表現は苦行の後になる。(なれば幸いである。)本展物故者の一人が、あれほどの佳作を遺しながら「一生に1点でいいからよい絵を描きたい。」といったことが忘れられない。又「大変なことをして絵かきになったと思っているだろう。でも僕たちにはこの道しかないのだからなァー。」と宴席で語られた大家も既に故人となった。先達はみな“絵かきは一生修業じゃ”といっているようである。そのことは甘受するとしても、私の知る限り、先達は優雅で風格があり、しかもユーモラスな面も持ち合わせ、決して窮々とはしていない。どこかに余裕があって、そこから感性豊かな発想と作品が生まれるのではないか。佐伯祐三やゴッホにしても“純粋"さが余裕であったと思っている。
物故作家展をみても、遺された作品に生の歓びをみてとれるし、永遠の息づかいさえ感じられる。(月日は百代の過客にして行きかふ年も又旅人也)───故人は爽やかにそして佳い仕事をし、今もなお私たちとともに心の旅を続けている。
本展の開催に当たって、ご支援下さった宮城県美術館をはじめ、所蔵家の皆様に心から感謝を申し上げる。委員・関係各位のご尽力並びに、大切な作品の搬送等の重責を担われた結城洋一氏、さらに所蔵先との連絡や膨大な事務を手際よく捌かれたギャラリーの前事務長の木下金治氏、現事務長の松本稔氏と職員に敬意を表する。
画集の編集・刊行については、特に学芸員の佐藤泰氏と副委員長の小山喜三郎氏のお力添えがあり、笹氣出版印刷のスタッフのすぐれた技術と熱意により、望外の図版の完成をみたことに感謝を申し上げる。
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